「こだわり食楽部」の商品の中から、毎月一つだけをピックアップ。
商品をセレクトしたバイヤ−本人から、こだわりの神髄をお伝えします。
今回ご紹介するのは、酒どころ新潟と蔵のみなさんのこだわりが生んだ、本物の旨さを教えてくれる日本酒です。とにかく酒造りに手間を惜しまず、蔵のみなさんが一所懸命につくられたこのお酒は、いろいろ語るよりまず一口味わい、その違いを体感していただきたい商品です。とはいえ、うんちくも味のうち。旨さの秘密をこれからご紹介します。
小田急商事株式会社
ストア営業本部
加工食品グループ
バイヤー 菊池 崇雄
酒蔵の君の井酒造さんは、今を遡ること約160年ほど前、江戸時代末期の天保年間に創業したと伝えられる老舗。日本海に面した頚城平野に位置する新潟県妙高市にあります。この地域は加賀の前田家、富山の前田家、糸魚川の松平家、高田の榊原家などが参勤交替で通った街道筋ということもあり、古くから栄えた土地柄。冬の豪雪は、酒造りに最良の環境と水を生み、夏の気候が良質の酒米をつくりだしてくれます。君の井酒造さんで使われる水は、豊富な雪解け水が流れる矢代川水系の天然水。米は地元新潟を代表する酒造好適米の五百万石。水、米、気候風土と酒造りに欠かせない絶好の条件が揃っています。
↑明治時代と現在の君の井酒造。時代は変われど、そこにある趣は変わりません
↑収穫時期の五百万石。酒米は粒が大きく酒のもとになるでんぷん質が多くあるのが特徴。中でも五百万石は同じ酒米で有名な山田錦と比べ、粒が大きく丸々としています。
→米が届いて最初の工程の精米。そのゆっくりさは精米歩合60%で約19時間。大吟醸で使用する精米歩合35%だと磨き上げるのに約100時間、4日ほどかかります。
←ひとつひとつの工程を制御するコンピュータパネル。
「惜しみなく手間をかける」のが君の井酒造さんのモットー。昔ながらの手作業とコンピュータ制御による厳密さを使い分け、伝統と最新テクノロジーを両立させたこれ以上ないほどの酒造りを目指しています。たとえば、進むにつれ水分が減り割れやすくなる精米は、コンピュータ制御でゆっくりゆっくりと。逆に、長年の経験に裏打ちされた繊細な勘を必要とする吟醸酒の洗米や蒸米などは、蔵人の手で。これまでに蓄積されたデータと杜氏に受け継がれたノウハウや心得を大切に、苦労や時間を惜しまず行います。
山廃仕込って何?ほとんどの方が聞いたことはあるといった程度で、その意味をご存知の方は少ないかも知れません。簡単に言うと日本酒というのは、米の中のデンプンを麹で糖分に変え、糖分を酵母によってアルコール発酵させてできあがります(詳しくは「基礎知識 日本酒ができるまで」で)。酵母を培養する際に、最近では予め用意された乳酸を加えるのが一般的です。一方、山廃仕込はこの工程で何も加えず、酒のもととなる酒母(しゅぼ)を4週間以上かけて人の手で丁寧にかき混ぜ、蔵の中の天然の乳酸菌を取り込んで行きます。古くから行われてきた伝統的な酒造りの技術ですが、現在山廃仕込を行えるのは全国に約1500あるといわれる蔵元のうち150にも満たないとか。難しい上に時間もかかる製法ですが、コクのある奥深い旨味と芳醇な香りが生まれると言われています。最近では、旨味成分のアミノ酸の量が数倍にもなるというデータも出ており、その味の違いがだんだんと明らかになってきました。
↑暖気樽(だきだる)。酒母の中にお湯を詰めた暖気樽を入れ、この樽を櫂のように回しかき混ぜます。手作業でゆっくりと温度を上げることで天然の乳酸菌をしっかりと取り込む、山廃仕込には必要不可欠な道具のひとつです。
↑大きな樽は床下に置かれた貯蔵タンクへ。昔ながらの製法は大切にしながらも、最近では安全性・衛生面などを考慮し酒蔵の景色も様変わりしました。
日本酒は年輩の男性。もしそんなイメージが邪魔をして飲まれていない方がいたとしたら、とてももったいない話しです。特に、私たちOdakyu OXが自社ブランドとしてお届けしている吟醸酒は、やわらかな香りとスッキリとした飲み口で、比較的女性に好まれる日本酒です。精米時に米をより多く削り、中心のデンプン質のみを使うことにより雑味が消え、また通常より低温で発酵させることなどで特有の味と香りが生まれてきます。さらに米を削ってつくる大吟醸などは味も香りもフルーティーと表現されるほど。日本酒本来の旨味と芳醇さを持ち、それでいてスッキリと飲める吟醸酒を、ぜひ味わっていただきたいものです。
日本酒ができるまで
「精米」
米の中心の心白と呼ばれる部分を残し、その周りにある脂肪やタンパク質を取り除きます。
「枯らし」
精米時の摩擦による熱をとり、米内の水分を均一にするため2〜3週間、タンクで貯蔵します。
「洗米」
表面に残っている糠を取り除くとともに必要な水分の吸水を行います。
※高度な精米を行っている吟醸酒は、機械だと水を吸いすぎてしまうため洗米も人の手で行います。
「蒸米」
米は炊かずに蒸します。蒸気で加熱することによって米の中のデンプンが糖分に変わりやすくします。
※吟醸酒用の蒸米は甑(こしき)といわれる昔ながらの大きな蒸し釜を使い、外硬内軟(がいこうないなん)=表面は適度に硬くべとつかず、内部は水分を含んだやわらかい状態にします。
「麹」
できあがった蒸し米は室温30度に保たれ麹室に運ばれます。そこで麹菌を振りかけよく混ぜます。昼夜を問わない作業を繰り返し、繁殖した麹菌が米の中心部に深く食い込んでできあがったのが麹です。
「酒母」(もと)
できあがった麹と蒸し米、水、そして酵母を加え、蔵人が櫂でかき混ぜながら酒母をつくり大量の酵母を育てます。
※この工程では、空気中のいろいろな雑菌の繁殖を防ぎ純粋な酵母の育成に役立つ乳酸菌の存在が重要になります。(山廃仕込の場合のみ)
「仕込み」(もろみづくり)
丈夫な酵母が育ったら、仕込みに移ります。さらに酒母に水、麹、蒸し米を加え、米のデンプンを糖質に変え、それを酵母がアルコールと炭酸ガスに分解します。アルコール発酵が始まると温度が徐々にあがり13度から14度に。ここでの温度管理が酒質に大きな影響を与える重要な工程です。
※吟醸酒は、発酵の最高温度を10度くらいに保つためタンクを二重にし冷水を流し徹底的な低温発酵でつくります。
「上そう」(しぼり)
アルコール発酵の終わったもろみを機械で搾り、酒と酒粕に分けます。そうして出てきて生まれた新酒が日本酒という訳です。
※もろみを布袋に入れいくつも積み重ね、上から圧力をかけ搾る伝統的な製法を用いている場合もあります。
●その後、生酒はそのまま、それ以外は加熱(火入れ)し発酵を止めて瓶詰めし商品となります。
日本酒は古くから日本人の生活習慣や文化、気候風土などに深くかかわって来たお酒です。栄養も豊富な上で、たくさんの種類があります。まだお好みの日本酒に出会っていない方も、探していただければきっと見つかるはずです。私たち君の井酒造でもOdakyu OXさんと共に、皆さんのお口に合うよう丹誠込めて酒造りに取り組んで参ります。ぜひお試しいただければと思います。
君の井酒造株式会社 製造部長 日野 貞夫(左)
君の井酒造株式会社 杜氏 早津 宏(右)
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